2020/08/06

保津川のアユのお話

プロジェクト保津川では、夏のこの時期に、毎年「保津川でアユ漁と川流れを楽しもう」というイベントを開催しています。

保津川に網を仕掛け、親子みんなで追い込み、アユを取って焼いて食べたり、ライフジャケットを着て川に流されて遊んだりと、保津川を身近に感じることができるイベントです。

2018年保津川で鮎漁と川流れを楽しもうの様子
2018年度に開催した「保津川で鮎漁と川流れを楽しもう」の様子

残念ながら、去年は増水により、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により中止になってしまいました。


アユってどんな魚なんでしょう?

この時期になるとスーパーで売られていたり、釣り好きの人から分けてもらえたりと、アユは夏の魚というイメージがあります。

アユ

アユは、山々が紅葉する秋になると群れを作り、産卵のために河口付近まで下っていきます。

このような行動ををするアユのことを落ち鮎と呼ぶそうです。

河口付近に着くと、粒の小さな砂利質で泥の堆積のない水通しの良く砂利が動く川床で産卵をします。

仔魚は海や河口付近で育ち、春になると親が下ってきた川を遡っていきます。

アユは、川魚のイメージが強いと思いますが、小さな時は海に住み、大人になると川に住む回遊魚なのです。

そういう理由で、この季節になるとちょうど人の近くの川にいるわけです。

更に詳しくアユについて知りたい方は、wikipediaのアユの項目を読んでみてください。なかなか興味深いです。


保津川のアユ

保津川を泳いでいるアユも海から来たアユかといえば、それは違うようです。

保津川のアユは、保津川漁業協同組合さんによって毎年放流されています。

令和2年度も稚鮎が全部で1200 kg。

保津川の上流から下流の様々な場所へ放流されています。

夏場に、保津川でアユ釣りをされている姿を見ると思いますが、釣り師さんが釣っているのは、放流されたアユだということになります。

毎年夏場に保津川でアユ釣りを楽しめるのは、漁協さんが放流されているからということですね。


保津川になぜ天然のアユがいないのか?

昔はもちろんいました。

では、なぜ今は天然のアユがいないのでしょうか?

それは人間が流れを制御するために、川の途中にたくさん堰を作ってしまったからです。

堰ができたおかげで、アユは上流へは上ることができなくなりました。

これが保津川に天然のアユがいなくなった大きな理由です。

当時の人は、魚が遡上していくことまでは考えて堰を設置しなかったようです。

遡上を拒まれるアユ


天然アユ復活に向けて

天然のアユ復活向けて、保津川の下流の桂川や淀川では様々な活動が行われています。

魚が遡上することができるように、魚道が設置されたり、魚道が無い堰ではアユの遡上調査とくみ上げ放流が行われています。

このような下流域からの地道な活動により、京都市内まではアユが戻ってくるようになりました。

京の恵みを生かす会ホームページ

しかし、まだ保津川までアユは遡上してきていません。嵐山の一之井堰がアユが保津川に上ることを難しくしているようです。

そこから、アユが上流に上れる手段ができれば、保津川まで天然のアユが遡上してくる可能性が出てくるそうです。

ちなみに、一之井堰には魚道はありませんが、かつて筏を通していた通路があるので、そちらのアユが使えれば上ってくるのかもしれません。


アユはきれいな水を好みます。

堰の問題が解決し、アユが保津川まで遡上してくるにはもうひとつ障害があります。

アユはきれいな水を好みます。

保津川上流には、日吉ダムがあり、そこから流れ出す濁水をなんとかする必要があります。

日吉ダムの濁水
日吉ダムから流れ出す濁水

この濁水の問題に取り組んでいるダムもあります。

愛知県豊田市にある矢作ダムでは、浮沈式濁水対策フェンスというものを使い、ダムに流入する清水と濁流が混ざらない工夫がされています。

矢作ダムホームページ>環境対策

昔は、もちろん日吉ダムより上流にも天然のアユがいました。

でも、今ではもう日吉ダムより上へアユが遡上するのは完全に難しい状態です。

桂川のアユは、日吉ダムから上と下で切り分けられてしまいましたが、日吉ダムを海と見立てて、陸封アユとして生息しているアユがいるようです。

残念ながら、日吉ダムの上流にある世木ダムから上流の上桂川へは魚道が無く、それ以上遡上することはありませんが、一定数のアユが生息しているそうです。

ダム湖に「陸封アユ」か 京都・日吉ダム、19年春に群れ発見(京都新聞記事)

人が変化させてしまった環境に合わせて、習慣を変え生きているアユには生命の力強さを感じます。


来年こそは、「保津川でアユ漁と川流れを楽しもう」開催を。

この時期、昨今の急激な環境変化により、長雨や急激に降る雨、またその影響によるダムの放流などの影響を保津川が受けることが多くなっています。

そのため、なかなか保津川を利用するイベントの開催が難しくなりつつあります。

保津川沿いで、人々が釣りやBBQを楽しむ姿は見受けられますが、川流れを楽しんだりや、水辺で気軽に遊ぶ姿はあまり見られません。

人と保津川との距離感は、昔比べて遠くなっているように感じます。

そんな中で、「保津川でアユ漁と川流れを楽しもう」は、実際に川へ入れて、水辺で楽しめる保津川沿いで唯一のイベントです。

プロジェクト保津川では、保津川を理想の風景にし、次の世代へと引き継ぐという目標を掲げて活動しています。

いつかはこのイベントで天然のアユをつかまえることができる日が来ることを夢見て、今後も活動を続けていきたいと思います。

コメントを残す