2009/07/03
保津川下りとラフティングの合同会議が開催されました!
保津川の安全や環境を話し合うための、保津川遊船企業組合(保津川下り)と、保津川のラフティング会社9社のみなさんによる初めての合同会議が、夜の保津川下り乗船場で開催されました。
保津川では毎年30万人を超える観光客が、川下りやラフティングを楽しみに来られています。本格的な夏の行楽シーズンを前に、保津川の水難事故を防ぎ、万が一の際にどのように対応するか、またゴミ問題をはじめいかに保津川の環境を守っていくのか、第一線の現場で活躍されている船頭さんやインストラクターのみなさんが初めて一堂に会した今回の会議、プロジェクト保津川も環境保全に取り組む団体として招待していただきました。
かつて筏流しが盛んに行われていた頃、筏と舟の間には川の航行に際して厳密なルールが存在していました。舟に比べて長くて小回りの利かない筏は、歴史も古いこともあって優先的な通行権を持っていました。上の写真からもわかるように、筏がやってくると、舟はいったん川の端に避けて通過を待ちました。一方で筏に比べて足の速い舟は、保津峡の2ヶ所でのみ筏を追い越しが認められていたといいます。
現在、保津川には多くのラフティング会社が参入し、他地域に本拠地を置いておられる会社もあることから、その実数は把握できていない部分もあります。ほとんどのラフティングやカヌーのみなさんと、保津川下りの船頭さんたちとの間では、お互いにマナーを守って安全に川下りがおこなわれています。ただ、そのマナーが周知・徹底されていないことからく、時として、保津川下りの舟との間でトラブルになることもありました。
また、保津川には舟の航行の安全を確保するために「川作」(かわさく)と呼ばれる作業によって、さまざまな人工物が設けられています。中には、大岩の上に設けられた「胴木」と呼ばれる丸太など、その位置を知っておかないと大事故につながりかねない場所も少なからずあります。
また、この「川作」は、上の写真のように船頭さんたちが峡谷の中で人力のみで作業されているのですが、作業は必要に応じて随時行われます。もし見通しの悪い急流で作業が行われていることを知らずに突っ込んでいってしまうと、これまた事故にもつながりかねません。
今までも、なんとなく慣例的にコミュニケーションが取られてきて、幸い大きな事故は起こっていませんが、それでもヒヤリとするようなことは、船頭さんもインストラクターのみなさんも何度かあったそうです。ましてや、大学のクラブをはじめとしたアマチュアグループや個人でラフティングやカヌーを楽しみに来られる方も多く、この方たちにこうした情報をどうやって伝えていくのかも大きな課題となっていました。
そこでこういった情報伝達の方法をどうするのか、万が一の場合はどうするのか、といったことが今回の会議で話し合われたのでした。孫ほども年の離れたベテラン船頭さんから若いインストラクターや船頭さん、みなさんの間で「あれはやめてほしい」「これは気をつけてほしい」ということが率直に議論され、「お互い知らなかったなあ」ということにたくさん気付くことができました。そんな中でみなさんが異口同音におっしゃっていたことは
「この川にはルールがあるんだ、ということを、みんなに知ってもらわないといけない」
ということでした。かつて、筏と舟の間がそうであったように、事故なく楽しい川下りを続けていくためにも、お互いが顔を合わせてしっかりとコミュニケーションを取っていくことがなによりです。
そしてまた、みんなが守れるルールを作っていくことで、そのルールが守られていくわけですが、実はそんなローカル・ルールをみんなで作ることによって世界的な観光地になった場所が日本にはあります。
それは北海道のニセコ・スキー場。「ニセコルール」とよばれるローカル・ルールはスキー場エリア外を滑走する人々と、すべてのスキー場利用者の安全のために作られた地域の公式ルールです。
パウダースノーで世界的に有名なニセコは、国内外から多くの人が訪れ、深雪を求めて圧雪されていない場所を滑る人もたくさんいます。しかし、場所によっては雪崩に巻き込まれてしまうこともあり、実際、多くの方が犠牲にもなっていました。そこで、スキー場に関係するすべての人が集まってルールを決め、このルールと雪崩情報をきちんと訪問客に知らせることで大きな成果を挙げ、訪れた人からも高い評価を得ることになりました。
保津川でも、来週、消防や保津川下り、ラフティングによる合同救難訓練が行われます。また、環境保全に向けた取り組みも、みなさんと一緒に進めていくことでも一致しました。今、プロジェクト保津川で市観光協会などに申し入れている花火大会のゴミ問題についても、ともに頑張りましょう、とおっしゃっていただき、私たちとしても大変心強い限りです。
トロッコ列車やラフティング、川下り、形はなんであれ訪ねていただいたお客さんが「また来たい」と思ってくださるような、そんな保津川になってほしいものです。日本中に、そして世界中に誇れる川をめざして、また一つ、新しい一歩が踏み出された、そんな“熱い”集まりでした。
(H)