2009/05/28
筏流し復活に向けた河況調査が行なわれました
昨日(27日)は、保津川上流部での筏流しの復活や木造船の航行の可否をさぐるために、筏復活プロジェクト連絡協議会で、保津川の上流、寅天堰から保津川下り乗船場までの区間で河川流況調査が行なわれました。
昨年の筏復活プロジェクトでは、桂川のうち「保津川」と呼ばれる、保津川下り乗船場から山本浜までの区間で筏流しの再現を行ないましたが、この区間は普段から保津川下りの船が航行しているため、船頭さんたちによって航路が整備されています。しかし、それより上流では60年ほど前に筏流しが途絶えて以降、船や筏が下るための航路の整備は行なわれておらず、また堰堤のような構造物も建設されるなど、果たして今後、筏流しや船の航行が出来るかどうかは、まったく判らないままでした。
そこで今回、ラフティングボートを用いて、寅天堰から亀岡市側の下流の区間で、水深や水の流れといった河川の流況を実際に調査・記録することになりました。
スタート地点は、地元では寅天堰と呼ばれている、亀岡市と南丹市の境界に位置する
上桂川統合堰。この大きな可動式の堰堤は戦後、建設されました。それまでは全部で7箇所の井堰が設けられていて、昔から村々の間での熾烈な水争いが繰り広げられていました。筏流しは、田植えのために井堰がせき止められる5月半ばごろまで行なわれ、それ以降は筏の航行が不可能になるために、冬まで筏流しはお休みだったそうです。
さて、ラフティングボートでの調査は、実は思っていたより大変でした。というのは、まずボートを下ろすところから一苦労。垂直に切り立ったコンクリート壁からは乗り込むことが出来ないため、少し下流のうっそうとした竹やぶの中を全員でボートを担いで河原に下りなければなりませんでした。もうまさに、探検!といった雰囲気。
ようやく水に浮かべても、途中にはたくさんの浅瀬があり、スイスイと進むなんてことはとても無理な箇所も多くありました。そんな場所では、やはりボートから降りて、みんなで川の中を歩いていきます。
実は、砂利が堆積して浅瀬になっているところの多くは、かつての井堰があった場所でもあります。川の中に、コンクリートや木材で作られた構造物があり、それが原因となって川の流れを変えてしまい、大量の土砂の堆積という状況を生み出していました。そして、ちょうど田植えの今頃は、田んぼに川の水を引き入れるために、水量が減って余計に浅くなっています。筏が5月で終わりだった、というのもよく分かりました。
そういう場所をひとつひとつ、地図に書き込んでいきます。船や筏が通れない、ということは、魚たちの行き来の妨げになってしまっている可能性もないわけではありません。里山同様に、いったん人の手の入った川は、手入れをせずに放っておくと荒れていくばかりですが、まさしくそんな現実を見たような気がしました。
午後1時過ぎにスタートしておよそ3時間をかけてゴールの保津川下り乗船場にボートが姿を現わしました。今回の調査はボートに乗り込んで調査を行なうチームと、車で伴走してサポートするチームの二手に分かれて行い、貴重なデータを多数収集することができました。
結論としては、今すぐに、上流から筏流しを行なうことは不可能な場所がたくさんあることが判明しました。筏流しや舟運が盛んだったころの川の様子を明らかにし、復活を実現させるために、この河況調査は今後もさらに上流や保津峡内部などの流域各所で行う予定です。困難な課題はたくさんあることがわかりましたが、しかし、将来、筏や舟が再び行きかう川の姿を思い浮かべると、新たな意欲も湧いてくる、そんな今回の調査でした。
(H)