2009/03/05
5ヶ国の視察団が保津川下りを訪問されました
今日はJICA(独立行政法人国際協力機構)と京都大学東南アジア研究所による国際協力プロジェクトの一環として、5ヶ国の農業者や研究者など研修生のみなさんによる視察団が保津川下り乗船場を訪問されました。
一行は、保津川下りのほか、母国の農村開発プロジェクトのあり方をさぐるため、美山町はじめ南丹地域各地の現状を視察されています。その中で、保津川下りを視察された目的は、400年以上の長い間、地域の人々が川とともに生き、伝統技術を大切にしながら観光産業として現在もなお水運が続いている、その現場を見学し、船頭さんたちのお話を聞くことでした。
今回参加されたのは、インド、インドネシア、カンボジア、ラオス、バングラディシュの5ヶ国のみなさん。はじめに船頭さんから1300年前に始まる筏流しや、400年前に始まった舟運の歴史の解説があり、その後の質疑応答では、保津川下りの現状や、船頭さんの生活などについて質問が飛びました。
また、乗船場にこの春から展示されているプロジェクト保津川のパネルの前で、保津川の環境問題や、環境保全に関する取り組みについても紹介されました。インドネシアから来られた方にお話を伺うと、やはりインドネシアでもゴミの問題は深刻化しており、どのようにそれを解決するか、大きな課題となっている、とおっしゃっていました。
みなさん口々におっしゃっていたのは、「とっても美しい川なのに、残念なことだ」ということ。保津川下りには、毎年1万人近い外国からのお客さんがお越しになっています。「日本の川は汚いなぁ」と思われるのか、それとも「さすが日本の川は美しいなあ」と思っていただけるのか、日本で一番観光客が訪れる川であろう保津川の環境をどう守るのか、私たちにとっても大切な問題です。
パネル展示を前にした説明の後は、船頭さんたちが普段使っている道具の説明。保津川下りの船頭さんたちの使う道具は、すべて手作りなんですよ。棹ひとつとっても、ただの竹竿ではなく、その先端にはサイゴ(ソヨゴ)という木を差込み、竹が割れたりしないように工夫がこらされています。何百年も受け継がれてきた「道具」、ただ舟に乗っているだけでは気づきにくい部分ですが、こういった「職人」としての世界もまた、保津川下りの大きな魅力ではないか、と思います。
一通りの説明のあとは、じゃあ実際にやってみましょう、ということで、作業の体験。ナタをはじめとした工具にも船頭さんにとっては大事な道具、なかなか「使わせて!」と気軽に言えるようなものでもないので、ちょっと羨ましい気もしました(笑)
また、竹竿も使いやすくするために、曲がっているところを火であぶって、桜の木の又を使ってゆっくりゆっくりと真っ直ぐに伸ばしていくそうです。この作業を丁寧にやらないと、竹が割れたり、あるいは使っている最中に折れてしまったりするそうです。慣れないうちは、すぐに使い物にならなくなるそうですが、逆にいい竹を使って丁寧に作ると、1年間持つそうです。
続いてシュロ縄の編み方を実演。船頭さんの家には必ずシュロの木があります。船頭さんが櫂を引くときに「ぎぃ~、ぎぃ~」と音がしますが、あの音は、実は櫂とシュロ縄がこすれて発している音なんですよ。
すると、バングラディシュから来られた方が、自分の国ではこうして縄を編むんですよ、と実演。シュロの繊維をすねに当てて編んでいくそうです。見ているだけでも痛そう・・・。いろいろな編み方があるものですね。
最後に対岸の船の係留場に移動して操船体験。簡単なように見えて、なかなか難しい船の操縦、船頭さんの仕事の奥深さを体験していただけたでしょうか。中でも舟の文化が身近な国なためか、バングラディシュの方はさすがに竿の扱いも上手。まるでカラオケでマイクを独占する人のように、なかなかその場を離れようとせず、船頭さんも脱帽!次はぜひ船頭さんもバングラディシュへ、と盛り上がりました。
この操船体験は日曜日の定例清掃会でも行ないますので、ぜひお越しください!
研修生のみなさんと、船頭さんと一緒に記念撮影。観光開発というと、ホテルを作ったり、ゴルフ場を作ったり、と、とかくデベロッパーによる「開発」がイメージされますが、この保津川下りのように、地域の環境を活かし、コミュニティの人々の力による「開発しない観光開発」もある、ということを知っていただけたら、と思いました。これからも、保津川の歴史と文化を通じた国際協力を続けて行きたいと思います。
(H)