2007/09/02
英国の川のほとりから
先週1週間は、出張でイギリスに滞在していました。これから何回かにわけて、イギリスで見てきたこと・聞いてきたことをレポートします。その第1弾は、ピーク・ディストリクト国立公園の風景から。
ピークディストリクト国立公園は、日本ではあまり知られてはいませんが、イングランド北部に位置し、マンチェスター、シェフィールド、ノッティンガムなどの大都市に囲まれアクセスも良いこともあって、イギリスで最も訪問者が多い国立公園だそうです。ちなみにその数は世界的にも日本の富士箱根伊豆国立公園についで、2番目だとか。
標高差がそれほど大きくなく(最高地点でも600m少々)、トレッキングには絶好の国立公園なだけではなく、周辺には小さな美しい村々やマナーハウスが点在しており、その人気の理由も分かるような気がします。そんなマナーハウスの1つ、ハドン・ホールで撮影した写真が上の1枚。
のんびり羊が草を食んでいる川のほとりで、ゆったりとした川の流れを見ていると、中世にタイムスリップしたような錯覚すら覚えます。
有名なミントンのハドン・ホールという陶器シリーズは、ここのタペストリーの図案に着想を得たとか。もう一つの有名なマナー・ハウスであるチャッツワースと違ってこちらは豪華絢爛という趣ではないものの、11世紀にまで歴史を遡れるというこの館は中世の雰囲気そのままで、邸内にも特にこれといったお宝はなく、古城といった言葉が似合う建物です。
ですが、庭園は手入れが行き届いており、その向こうに見える山々とあいまっていつまで見ていても見飽きない風景。
道路にしても、建物にしてもコンクリートむき出しではなく、古いもの、景観を非常に大事にするイギリス人の気質が垣間見えるような気がします。そして、川に関してもそれは同じで、無粋なコンクリートの護岸などどこにも見当たらない、自然のままの姿、あるいは古い石積みの護岸の川は、見る人の心をなごませてくれます。わざわざ「近代的」な護岸を廃して、自然に近い工法で、かつての川の姿を取り戻す取り組みも行われており、そしてそういうことが「官」の手だけで行われるのではなく、ともすれば環境破壊的な結果をもたらしかねない市場経済の仕組みすらうまく取り込み、広く市民もさまざまな形で参加しているところに、成熟した市民社会の姿としての彼我の差を感じずにはいられません。
プロジェクト保津川 原田