2021/06/06

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」成立に際してのNGO共同提言

プラスチックごみの削減やリサイクル強化に向けた、いわゆる「プラスチック新法」(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が4日の参院本会議で可決、成立しました。同法はプラスチックを使用する製品の設計から廃棄物処理に至るまで、そのライフサイクル全般における「3R(リデュース・リユース・リサイクル)+Renewable(再生可能)」を促進するという内容で、プラスチック汚染の防止に向けた大きな一歩となります。しかし、日本は1人当たり使い捨てプラスチックの使用量が世界第2位ともいわれ、また世界でもっとも多くのプラごみを輸出している現状では、新法だけではまだまだ十分ではないのが現状です。

これに対してプロジェクト保津川も参画する全国川ごみネットワークなど環境NGO/NPO14団体でつくる「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」では、地球規模のプラスチック汚染問題を解決するための「法的拘束力のある国際協定」の早期発足に向けて日本が最大限の貢献を行うことを求めるとともに、「国内のプラスチック汚染問題全体を包括する『基本法』の早急な制定がなおも必要」などとする共同声明を発表しました。

なお、この声明にはプロジェクト保津川も賛同しています。

環境大臣  小泉 進次郎 殿
経済産業大臣  梶山 弘志 殿

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」成立に際してのNGO共同提言

包括的な基本法を早急に制定し、プラスチック製品の大幅削減に向けた実効的な対策導入が必要

「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバー及び賛同24団体は、本日、第204回国会で「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」が成立したことにつき、対策の対象がプラスチック使用製品のライフサイクル全体にまで拡大した点を評価します。しかし今後政府として地球規模のプラスチック汚染を包括的に解決するために不可欠な「法的拘束力のある国際協定を早期発足させることに最大限の貢献を行う」とともに、「プラスチック汚染問題全体を包括した基本理念となるような『基本法』を早急に制定し、その下で総量の大幅削減を前提に実効的な対策を導入すること」が、なおも必要であると考えます。

日本の廃プラスチックの有効利用率は85%とされています*1が、実際には熱回収や輸出に依存し、国内では16%しかリサイクル処理できていません。廃プラスチックを適正に処理するためには、何より大幅なプラスチック製品の総量削減が必要となります。しかし、プラスチック新法の導入に際し、無償提供されるプラスチック製品の削減のためのポイント還元措置に補足的に触れられているものの、過剰なプラスチックの生産の大幅削減や、再使用(リユース)の促進には踏み込まず、結果として資源循環も担保できない内容です。
*1 2019年の国内廃プラ総排出量850万トンに占める、輸出を含むリサイクルと熱回収の合計726万トンの割合 (プラスチック循環利用協会)

また、「プラスチック資源循環戦略」で「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入*2」との目標が示されるなど、プラスチックを積極的に代替品に切り替える動きが進みますが、必要不可欠ではない使い捨てプラスチックは生産や使用そのものを大幅抑制すべきです。また、バイオマス由来や海洋生分解性の代替品が持続可能性の担保がないままに「環境に配慮して設計されたもの」としてむやみに推進されると、新たな環境・社会問題を助長するおそれがあります。*2 2018年のバイオマスプラスチックの国内投入量は7.2万トン (バイオプラスチック導入ロードマップ)

プラスチック新法では、新たに市町村によるプラスチック使用製品廃棄物の一括回収が実施されますが、分別回収と再商品化に伴う費用はすべて自治体負担となり、「製品の設計から消費後の段階までライフサイクル全般に渡り金銭的責任を含む責任負担を、自治体や納税者から生産者に移転することで、廃棄物総量の削減や資源循環を促進し、環境負荷を低減するという、拡大生産者責任の原則*3」に反しています。これでは、製造事業者や使用事業者に必要不可欠でない製品の生産や流通を抑制するためのインセンティブが無いため、プラスチック製品の削減にはつながらず、大量生産されたプラスチック製品が、熱回収を中心とした焼却や輸出により処理されることで、今後も地球温暖化要因となるCO2の大量発生や、プラスチックごみの環境流出が続きます。
*3 OECD (2016). Extended Producer Responsibility: Updated Guidance for Efficient Waste Management.
他にも、プラスチック使用製品に使用する有害化学物質などによる、人の健康・生態系への悪影響が懸念されます。また、特に自然環境への流出の可能性が高い漁具*4や農業用器具においては、流出防止や漁具流出後の回収のための管理制度が確立していません。さらに、製品の廃棄前の段階で発生する一次マイクロプラスチックの海洋流出は年間130万トンに及び、日本を含む高所得国ではプラスチックの海洋流出の62%を占めると推定されています*5。しかしながら、プラスチック新法にはこれらへの対策が盛り込まれていません。
*4 日本の国土面積の4倍に相当する世界最大級の海洋ごみのたまり場、太平洋ごみベルトにおいて、46%がプラスチック製の漁網
*5 The Pew Charitable Trusts (2020). A Comprehensive Assessment of Pathways Towards Stopping Ocean Plastic Pollution.

ついては、日本政府に対し、以下の通り提言します。

  1. 循環型社会形成推進基本法(循環基本法)に規定された優先順位に基づき、発生するプラスチックを最大限抑制することを最優先した上で、次に代替品を含め長期間利用やリユース等、その次に使用済みプラスチックの水平リサイクルを推進することにより、「熱回収を最小化しつつ、環境への流出を2030年には根絶」できるよう、社会基盤の構築に必要な措置を講ずること。
  2. ワンウェイ(使い捨て)プラスチックについて、「2030年までに製造・利用等を原則禁止」とし、実現に向け「2025年までの削減率、及び、分別回収率の目標を設定する」こと。その上で、リスクの大きい品目や必要性の低い品目を特定し、優先順位を付けて「製造・利用等禁止や有料化を段階的に導入するために、法改正を含め必要な措置を講ずる」こと。また、デポジット制などによる確実な回収率達成を義務付けること。
  3. プラスチック使用製品につき、自然環境や社会へのリスクを十分防ぎつつ発生抑制と資源循環を促進できるように科学的見地から環境配慮設計の基準を設定し、成分表示や環境負荷、廃棄方法等についての表示を義務付けること。含有される有害化学物質により、人の健康又は生態系に悪影響を発生させることがないよう、材料・添加剤について、ポジティブリスト制の導入等「有害化学物質管理措置を講じる」こと。その上で、環境配慮設計の基準を満たさない「非持続可能な製品は、製造・利用を段階的に禁止」すること。
  4. 代替素材の導入に当たっては、拡大目標を取り下げた上で、当該素材の生産のための土地利用転換に伴う環境破壊やリユース・リサイクル可能性などライフサイクル全体での環境負荷、食料との競合等を含む総合的見地から検証を行い、「特に悪影響の大きい代替素材の使用を禁止する」こと。やむを得ず代替素材を導入する際には、明確な基準を設けた上で、「環境への負荷が低い素材が使用されるよう、義務付ける」こと。
  5. 製造事業者及び使用事業者に対し、上記の環境配慮設計から、使用済みプラスチック製品の分別回収・リユース・リサイクルまでライフサイクル全般に渡る責任の負担を求める「拡大生産者責任を早期に導入する」こと。市町村によるプラスチック使用製品廃棄物の一括回収の実施に関しては、拡大生産者責任の原則に基づき、「一括回収と再商品化についての費用負担を製造事業者及び使用事業者に求める」こと。
  6. 漁具及び農業用の器具等による環境汚染を防止し資源循環を推進するため、拡大生産者責任の原則に基づき、製造事業者や使用事業者への環境配慮設計や流出防止措置の導入を義務付けること。国際的な最良管理手法*6等を参考に、漁具の海洋流出を防止し流出後の環境影響を軽減・回復させるために、漁具マーキング等適切な漁具管理や流出時の報告・回収を義務付け、必要な基盤整備等を行うこと。*6 例The Global Ghost Gear Initiative. The Best Practice Framework for the Management of Fishing Gear.
  7. 製造・流通・使用過程で生ずる一次マイクロプラスチックの環境への流出の防止のために、マイクロビーズ・マイクロカプセルなど、「意図的に使用されるマイクロプラスチックの製造・利用を早期に禁止する」こと。また、合成ゴムや合成繊維など、発生の量やリスクが特に大きいとされる製品を中心に、環境への影響調査を行いつつ、予防原則の観点から「一次マイクロプラスチック発生抑制対策を早期に導入する」こと。
  8. 影響が広範にわたるプラスチック汚染問題の本質的な解決のためには、本法案のような個別法の設定だけでは不十分であるため、「明確な発生抑制目標を有し、プラスチック汚染問題全体を包括した基本理念となるような『基本法』を早急に制定」すること。
  9. 日本政府として、国連環境総会において、地球規模のプラスチック汚染を包括的に解決するために不可欠な「明確な国際目標、科学的なモニタリングと報告の体制、及び、プラスチックのライフサイクル全般への包括的な規制を有する、法的拘束力のある国際協定を早期発足させるために、最大限の貢献を行う」こと。

減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク

メンバー団体 (五十音順)
特定非営利活動法人 OWS
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
一般社団法人 JEAN
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
全国川ごみネットワーク
特定非営利活動法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
一般財団法人 地球・人間環境フォーラム
公益財団法人 日本自然保護協会
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
公益財団法人 日本野鳥の会
特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス
特定非営利活動法人 プラスチックフリージャパン
容器包装の3Rを進める全国ネットワーク
一般社団法人 リアル・コンサベーション

賛同団体 (五十音順)
特定非営利活動法人アーキペラゴ
Rびんプロジェクト
小山の環境を考える市民の会
環境問題を考える会
さがみはら環境問題研究会
認定特定非営利活動法人 スペースふう
Hamaumi-浜松の海を守る会
特定非営利活動法人 プロジェクト保津川
奈良エコライフ研究会
山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト

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